ADIPOSE-DERIVED MESENCHYMAL STEM CELL

脂肪由来幹細胞(ASC)、幹細胞とは

ひざの再生医療に用いる“脂肪由来幹細胞:ASC”は、幹細胞と呼ばれる細胞の一種です。
ここでは、幹細胞と脂肪由来幹細胞についての特徴や治療の種類、安全性についても詳しく解説します。

小林(こばやし)信也(しんや)医師が監修しました

RDクリニック医師

日本再生医療学会認定医/日本整形外科学会認定スポーツ外科医/日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医/日本整形外科学会専門医/日本整形外科学会運動リハビリテーション医/日本リハビリテーション学会認定臨床医
1994年 富山医科薬科大学卒業後、新潟大学機能再建外科入局。以降、関連病院勤務(脊椎センター長等歴任)を経て、2023年よりRDクリニックにて勤務。

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幹細胞(かんさいぼう)とは

私たちの身体は、元々はたった一つの細胞(受精卵)でした。細胞が分裂を繰り返し、様々な組織となって人の身体が作られます。

大人になって身体の成長がゆるやかになっても、皮膚や血液のように、ひとつひとつの細胞は絶えず入れ替わり続けます。このように、寿命を迎えた細胞と入れ替わるための新しい細胞を生み出し補充する能力を持つのが「幹細胞」です。

幹細胞とは自己複製能力と多分化機能を合わせ持つ細胞

幹細胞とは①自己複製能力と、②多分化機能を合わせ持つ細胞です。

このページでは主に自身の幹細胞を用いた培養幹細胞治療、脂肪由来幹細胞療法について解説します。

①自己複製能力
自身と全く同じ能力を持つ細胞に分裂することができる
②多分化機能
自身とは異なる様々な細胞に変化(分化)する

幹細胞は私たちの体の色んなところに存在し、骨や筋肉、脂肪などを構成する細胞をそれぞれの組織で生み出します。

幹細胞が持つホーミング効果

幹細胞には、壊れて働けなくなった細胞がある部位や、細胞の数が減って足りない部位に集まって、修復する働きがあります。ダメージを受け損傷した部位から修復要請の信号が発信され、それを見つけた幹細胞が損傷部位に集まり、必要な細胞に変化(分化)してダメージを修復するのです。このように傷ついた部位に集まろうとする仕組み”をホーミング効果といいます

幹細胞の種類

どんな種類の細胞にもなれる、全能性幹細胞(ぜんのうせいかんさいぼう)

全能性幹細胞とは、受精直後から約2週間後の受精卵のことをいい、どんな種類の細胞にもなれる能力を持つ幹細胞です。

身体にある様々な細胞を作り出すことができる、多能性幹細胞(たのうせいかんさいぼう)(Pluripotent Stem Cell)

多能性幹細胞は、胎盤などの胚体外組織を除く体中の様々な組織に分化する能力を持つため、私たちの身体にある様々な細胞を作り出すことができる細胞のことです。現在までに樹立されている多能性幹細胞としては、ES細胞とiPS細胞があげられます。ただし、これらの細胞はまだ実用化には至っておらず、限られた治験でしか行われていません

ES細胞(Embryonic Stem Cell:胚性幹細胞)

胚(受精卵が数回分裂し、100個ほどの細胞のかたまりとなったもの)から細胞を取り出して培養したものをES細胞といいます。他人の受精卵から作られる細胞であるため、拒絶反応のリスクや倫理的ハードルが高く実用化は困難な状況です。

iPS細胞(induced Pluripotent Stem Cell:人工多能性幹細胞)

人体の細胞にリプログラミング因子を加えて培養し、人工的に作った多能性幹細胞。患者自身の細胞を元にすれば拒絶反応の心配はないとされていますが、腫瘍化の課題が解決できておらず、まだ研究途上とされています。

多分化能幹細胞(たぶんかのうかんさいぼう)(組織幹細胞・体性幹細胞)

決まった組織や臓器のための細胞を作り続ける、組織幹細胞(体性幹細胞)

  • 血をつくる造血幹細胞
  • 神経系をつくる神経幹細胞 など

皮膚や血液のように、私たちの体の中に存在し、決まった組織や臓器で新しい細胞を作り続ける幹細胞を組織幹細胞(組織性幹細胞)または体性幹細胞といいます。

組織幹細胞は何にでもなれるわけではなく、血をつくる造血幹細胞は血液系の細胞を、神経系をつくる神経幹細胞は神経系の細胞のみを生み出すというように、基本的にはそれぞれが決まった役目を持っています。

様々な細胞になり得る、間葉系幹細胞

組織幹細胞の一つである間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell, MSC)は、筋肉や軟骨、脂肪、神経などに分化する「多分化能」を持っており、ES細胞やiPS細胞のように様々な細胞になり得る細胞です。

脂肪由来幹細胞(しぼうゆらいかんさいぼう)とは

脂肪由来幹細胞は、皮下脂肪の中に存在する間葉系幹細胞

脂肪由来幹細胞は、皮下脂肪の中に存在する幹細胞で、骨髄に存在する間葉系幹細胞と似た性質を持っています。脂肪由来間葉系幹細胞(Adipose-Derived Mesenchymal Stem Cell, ASC)とも言います。

脂肪由来幹細胞は組織幹細胞の中でも採取がしやすく、幹細胞が豊富に含まれているため、様々な治療への活用ができる細胞として注目されています。

脂肪由来幹細胞の効果

1.組織の修復(ホーミング効果)

脂肪由来幹細胞は間葉系幹細胞と似た性質を持つ多能性幹細胞ですので、様々な細胞になり代わることができ、ダメージを受けた組織を修復する効果が期待できます

また幹細胞には、壊れて働けなくなった細胞がある部位や、障害を受けて細胞の数が減った部位に集まって、修復する働きがあります。これをホーミング効果といいます。

2.抗炎症作用

脂肪由来幹細胞には抗炎症作用(炎症を抑える効果のある物質を分泌する性質)があるため、痛みなどの炎症を抑えて症状を抑える効果も期待できます。

脂肪由来幹細胞を用いた治療法

様々な細胞の代わりになることができ、ほぼ無限に増やすことができる脂肪由来幹細胞は、多くの医療に活用され始めています。その代表的なものが、脂肪由来幹細胞を用いた変形性関節症の治療である「ひざの再生医療」です。

ひざなどの変形性関節症に対する再生医療

関節の軟骨が失われて痛みが生じる変形性関節症(変形性膝関節症)に対して、脂肪由来幹細胞は高い効果を発揮します。培養した脂肪由来幹細胞を関節の中に投与すると、軟骨の減った部分に幹細胞がくっつき、組織を修復します。幹細胞がすり減った軟骨の代わりとなり、変形性関節症を根本的に治療します。これが「ひざの再生医療」です。

今までの変形性膝関節症に対する治療法は、初期~中期までは痛み止めなどの対症療法を続けるしかなく、後期(重度)になってから人工膝関節置換術などの手術を行うといった、非常に限られた選択肢しかありませんでした。

ひざの再生医療は変形性関節症の初期から治療ができる根本治療であり、入院の必要がなく、必要に応じて何度でも治療を繰り返すことも可能な、変形性関節症の新たな治療の選択肢です。

従来の脂肪注入に変わる治療への活用

  • 脂肪由来幹細胞を用いた豊胸術(胸の再生医療・脂肪幹細胞培養豊胸)
  • 脂肪由来幹細胞を用いた顔への脂肪注入

従来の脂肪注入では脂肪を多く採取する必要があり、身体への負担も大きく、痩せ型の方には適していませんでした。また生着率も15~20%前後と言われており、その低さが課題となっていました。

脂肪由来幹細胞を用いた豊胸や脂肪注入では、生着率が5倍以上になったという論文もあり、様々な文献で「幹細胞が多ければ定着率が上がる」と立証されています。また、脂肪由来幹細胞は培養して用いることができるため、採取する脂肪の量も減らすことができ、痩せ型の方でも問題なく治療を行うことができます。

脂肪由来幹細胞を用いた
治療の流れ

脂肪由来幹細胞を用いた治療の基本的な流れは以下のようになります。
治療を受けるには専門医の診断を受け、良質な細胞を用いた治療を提供している医療機関を選ぶことが大切です。

  • 1.カウンセリング・血液検査

    カウンセリング(医師の診断)のうえ、治療に進む場合は、血液検査を行います。

    また、変形性膝関節症(ひざの再生医療)の場合は、MRIなどの画像診断が必要となります。

  • 2.脂肪と血液を採取

    腹部や臀部(おしり)、大腿部(太もも)などの目立ちにくい部分に局所麻酔をし、角砂糖ひとつ程の量の脂肪を採取いたします。治療内容にもよりますが、脂肪由来幹細胞の培養のために採取する脂肪の量は、およそ角砂糖1個分が目安です。
    また、細胞を培養するために必要な血液も合わせて採取します。

    採取した脂肪と血液は、委託先の細胞培養加工施設へ移送されます。細胞加工培養施設(CPC)と呼ばれる専用の施設にて、採取した皮下脂肪から脂肪由来幹細胞を取り出して増やします。細胞の培養にはおよそ6週間ほどの時間が必要です。

  • 3.増やした幹細胞を患部に投与(細胞移植)

    注射器を使って、直接患部へ投与します。

変形性膝関節症のための
治療の流れはこちら

脂肪由来幹細胞の安全性

脂肪由来幹細胞を用いた治療法は、元々自分の身体にある細胞を増やして戻す治療のため、副作用などのリスクは少なく、安全性は高いといえます。さらに、再生医療の提供には国からの認可が必要です。

また、細胞の培養に使う血液によっても安全性が異なります。

国から認可を受けた医療機関のみが再生医療を提供できる

脂肪由来幹細胞を用いた治療は「再生医療」と言われています。
日本では2014年に『再生医療等の安全性確保等に関する法律(再生医療安全性確保法)』が施行され、再生医療を提供する医療機関・クリニックはこの法律に則った治療内容(再生医療提供計画)を国が許認可した“委員会”へ提出し、審査のうえ認可を得なければなりません。

細胞を扱う医療は最先端かつ高度な再生医療のため、委員会を通して国から認可を受けた医療機関のみが提供できる仕組みになっています。

再生医療提供計画を厚労省へ提出し、委員会を通して認可を受けた医療機関には、以下のような「再生医療等提供計画番号」が交付されます。

再生医療等提供計画番号
PB3240080(自家脂肪由来幹細胞を用いた変形性関節症治療)

細胞を培養するのに使う血清(血液)について

細胞を培養し増やすためには、栄養となる血液が必要です。通常、身体の中では血液が細胞や組織に栄養を運んでいますが、細胞を取り出して専用施設で培養する際にも同じように血液が必要になります。

幹細胞を培養する際に用いる血液は、自己血清(患者本人の血液)もしくは動物由来(ウシ胎児血清)の血液が使われますが、どちらを採用しているかは医療機関・クリニックが提携している細胞培養加工施設によって異なります。

自分自身の血液を原料に作成された自己血清

患者本人の血液を使用した自己血清は、動物由来のものに比べて安全性が高いといえます。デメリットとしては、採血が必要なためいつでも自由に調達できるわけではなく、体調により必要な量が一度に採取できない可能性があるといった点があげられます。

RDクリニックが提供する再生医療では、細胞培養に使われる血清は100%患者様ご本人の自己血清を使用します。
ご不明な点や疑問点、不安に思うことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

ウシ胎児血清(FBS)

ウシ胎児血清(FBS)は、主に実験などの培養で用いられるもののほか、人体に用いるための細胞培養にも用いられます。ウシ胎児血清が細胞培養に使われる理由は、ウシ胎児血清が優れているから…というわけではありません。いつでも、どんな量でも調達できる利便性があるため、使われているというのが事実です。

デメリットとしては、ウシという動物由来の血清のため、過敏症や未知の感染症(プリオンによる狂牛病)など引き起こす可能性が捨てきれないという点があります。

再生医療の治療を受ける際、細胞培養に自己血清が使われるのか、ウシ胎児血清が使われるのかは、治療を受ける前の「同意書」に記載がされています。同意書にはリスクや副作用・デメリットといった大切な内容が記載されていますので、安全性を考慮するうえではしっかりと目を通し、納得してから治療を受けることをおすすめします。

PRPと幹細胞(脂肪由来幹細胞、ASC)との違い

変形性関節症に対する「再生医療」と呼ばれる治療法には、幹細胞を用いた治療のほかに、自身の血小板を用いた“PRP(多血小板血漿)療法”があります。

PRPと幹細胞は、用いるものが血液もしくは細胞という違いだけでなく、効果の表れる仕組みや修復力などに違いがあります。

PRP(多血小板血漿)療法とは

PRP(多血小板血漿)療法とは、血液に含まれる成分を用いて、人間が本来持っている自然治癒力を引き出す治療法です。

PRPとはPlatelet-Rich Plasmaの略で、日本語で“多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)”と呼ばれるものです。多血小板血漿とは、血液を遠心分離にかけて「血小板」を多く含む成分を抽出したものです。抽出した成分を治療したい箇所へ注入します。

PRP(多血小板血漿)療法とは

PRP療法のメリット

  • 変形性関節症の治療の場合、どのグレードでも受けることができる
  • 腱損傷、靭帯損傷にも使用することができる
  • 早い人で治療後1週間、通常は2~3週間ほどで効果を実感できる場合が多い
  • 自分の血液を用いるため、アレルギーなどの副反応が起こりにくい
  • すぐに治療を受けることができ、日帰りでの処置が可能
  • 入院が不要のため、生活に支障が出ない
  • 注射器で投与するだけなので、治療の痕が残りにくい
  • 必要であれば、繰り返し治療を受けることができる

PRP療法のデメリット

  • PRP療法を受けることができない方がいる
    • がん治療中の方
    • 治療部位に感染を起こしている方
    • 発熱がある方
    • 薬剤過敏症の方
    • 免疫抑制剤を飲んでいる方
  • 血小板の活性度合いなどが影響し、効果の表れ方に個人差が出ることがある
  • 関節の隙間が無くなった重度の変形性関節症や肥満の場合、効果が低下する
  • 注射による反応痛が出る場合がある
  • 治療後数日間、痛みや炎症(熱感、赤み、腫れ)を伴うことがある
  • 公的医療保険の適用外のため自由診療となる

PRPと幹細胞(脂肪由来幹細胞、ASC)との違いまとめ

PRPと幹細胞での治療は、自分の身体に元々備わっている力を用いた再生医療という共通点があります。入院やメスを使う手術が必要なく、日常生活に支障が出ないところも共通します。

違いとして一番大きいのは、修復力の強さです。幹細胞は細胞を培養するためにおよそ6週間の時間を必要とし、PRPに比べて料金も高額となりますが、良質な細胞を提供できる医療機関にて治療を受け、その効果が実感できれば、より効果が長続きする可能性が高いといえます。

用いるもの 特徴 効果の表れる時期 向いている方
PRP 自身の血液 幹細胞より安価 通常2~3週間 軽症の方
幹細胞 自身の幹細胞と血液 より低リスク
修復力が高い
数ヶ月~半年 根本治療をご希望の方

変形性関節症などの痛みがある場合、どの治療が適しているか医師の診断が必要となります。信頼できる医療機関にて医師の診断を受け、リスクやデメリットも含めて納得したうえで治療に進むことをおすすめします。

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当院は2005年より再生医療を専門に行っております。
カウンセリングは何度でも無料で承りますので、まずはお気軽にご相談ください。
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ひざの再生医療さいせいいりょうとは?

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